「予定が変わると、とても不安になってしまう」
「何度説明しても、こちらの意図がうまく伝わらない」
「特定のものや順番に強くこだわる」
「大きな音や人混みをとても嫌がる」
ASD(自閉スペクトラム症)のあるお子さまを育てていると、こんな場面に出会うことがあるかもしれません。
周りから見ると「わがままなのかな?」「どうしてそんなにこだわるんだろう?」と思われてしまう行動でも、その子にとってはきちんと理由がある場合があります。
大切なのは、その行動だけを見て「やめさせよう」とするのではなく、
「この子は今、何に困っているんだろう?」
と、その背景を考えてみることです。
ASDの特徴や程度は一人ひとり異なります。すべてのお子さまに同じ方法が合うわけではありませんが、今回は家庭でも取り入れやすい7つのコツをご紹介します。
① できるだけ具体的に伝える
「ちゃんとして」
「もう少し待って」
「いい感じに片付けて」
私たちが普段何気なく使っている言葉ですが、曖昧な表現を理解することが難しいお子さまもいます。
例えば、
「もう少し待ってね」
ではなく、
「あと5分待とうね」
「ちゃんと片付けて」
ではなく、
「おもちゃを、この箱に入れよう」
というように、できるだけ具体的に伝えてみましょう。
「何を・いつまでに・どうすればいいのか」が分かると、行動しやすくなることがあります。
② 「見える化」で分かりやすくする
言葉だけの説明よりも、写真やイラスト、文字など、目で見える情報の方が理解しやすいお子さまもいます。
例えば、
「朝ごはん → 着替え → 歯みがき → 学校」
と一日の流れを示したり、
「公園 → スーパー → 家」
と外出の予定を見せたり。
やることが終わったらチェックを入れる方法もあります。
「次に何をするのか」が見えるだけで、不安が小さくなることがあります。
お子さまの理解しやすい方法に合わせて、写真、イラスト、文字などを使い分けてみましょう。
③ 予定の変更は、できるだけ早く伝える
予定が急に変わると、大きな不安を感じるお子さまもいます。
例えば「今日は公園に行く」と思っていたのに、突然「雨だからスーパーに行こう」と言われると、気持ちを切り替えることが難しい場合があります。
変更が分かっている場合は、
「今日はいつもと違うよ」
「公園には行かずに、スーパーへ行くよ」
と、できるだけ早めに伝えてあげましょう。
変更する前と後を絵や文字で見せるのも一つの方法です。
もちろん、生活の中では突然の予定変更もあります。
そんなときも「どうしてできないの?」ではなく、予定が変わったことで不安になっているのかもしれないという視点を持つだけで、関わり方が変わってきます。
④ 「こだわり」をすぐに否定しない
同じ服を着たがる。
同じ道を通りたがる。
物を決まった順番に並べる。
特定の遊びを繰り返す。
こうした「こだわり」が見られることがあります。
大人からすると「そんなこと、どちらでもいいのに」と思うかもしれません。
でも、その子にとっては、いつもと同じであることが安心につながっている場合があります。
生活に大きな支障がないのであれば、無理にすべてを変える必要はありません。
一方で、生活に困りごとが生じている場合は、
「今日は違う道だけど、お菓子屋さんまではいつもと一緒」
など、安心できる部分を残しながら少しずつ変化を経験していく方法もあります。
⑤ 感覚の違いに目を向ける
私たちには気にならない音や光、におい、肌触りなどを、とても強く感じるお子さまもいます。
掃除機やドライヤーの音。
人がたくさんいる場所のざわざわした音。
服のタグや素材。
食べ物の食感やにおい。
強い照明。
逆に、刺激を感じにくく、強い刺激を好むお子さまもいます。
「みんな平気だから大丈夫」と考えるのではなく、
「この子には、どう感じているんだろう?」
という視点を持ってみてください。
苦手な刺激が分かれば、避ける、減らす、休める場所を用意するなど、環境を調整できることがあります。
⑥ パニックになったときは、説明よりも安心を
予定が変わったり、うまく気持ちを伝えられなかったり、苦手な刺激が重なったりすると、泣いたり、大きな声を出したり、その場から動けなくなったりすることがあります。
そんなときに、
「どうしてそんなことするの?」
「落ち着きなさい!」
とたくさん言葉をかけても、さらに混乱してしまうことがあります。
まずは安全を確保し、刺激の少ない場所へ移動するなど、落ち着ける環境をつくることを優先してみましょう。
理由を聞いたり、次はどうすればいいかを一緒に考えたりするのは、落ち着いてからでも遅くありません。
そして、落ち着いた後に、
「何が起きる前に不安そうだったかな?」
「音が大きかったのかな?」
「予定が変わったからかな?」
と振り返ってみることで、次の工夫につながることがあります。
⑦ 「できない」だけでなく「得意」にも目を向ける
ASDのあるお子さまの中には、特定のことに強い興味を持ったり、好きなことについて驚くほど詳しかったりする子もいます。
電車、恐竜、昆虫、数字、地図、ゲーム、絵、音楽など、興味の対象はさまざまです。
その「好き」を無理にやめさせるのではなく、学びやコミュニケーションにつなげられることもあります。
例えば電車が好きなら、
電車の名前から文字を覚える。
時刻表から数字に興味を広げる。
電車について友達や大人と話してみる。
そんなふうに、「好き」はその子と周りをつなぐ入口になることがあります。
苦手なことをできるようにすることだけが成長ではありません。
その子が持っている興味や得意なことを見つけ、伸ばしていくことも大切です。
「その子に合う方法」を一緒に探していく
ASDは「自閉スペクトラム症」と呼ばれるように、その特徴の現れ方は一人ひとり異なります。
よく話す子もいれば、言葉で気持ちを伝えることが難しい子もいます。
人との関わりを好む子もいます。
感覚の違いが大きい子もいれば、ほとんど気にならない子もいます。
だからこそ、
「ASDだからこうする」ではなく、
「この子には、どんな方法が分かりやすいだろう?」
と考えることが大切です。
保護者だけで抱え込まず、周りと一緒に
子育ての工夫だけですべての困りごとが解決するわけではありません。
「集団生活がとてもつらそう」
「コミュニケーションで困ることが増えてきた」
「家庭だけでは対応が難しくなってきた」
そんなときは、学校や園、医療機関、自治体の相談窓口、児童発達支援や放課後等デイサービスなど、地域の支援を頼ることも一つの方法です。
大切なのは、誰か一人が頑張ることではなく、
その子が安心して過ごせる方法を、周りの人たちと一緒に探していくこと。
家庭、学校、福祉、医療など、それぞれの立場から子どものことを知り、情報を共有することで、見えてくることもあります。
※本記事は一般的な情報をお伝えするもので、お子さま一人ひとりの特性に対する診断や治療を目的としたものではありません。発達について気になることや生活上の大きな困りごとがある場合は、医療機関や専門機関等へご相談ください。

